ぜんそく + 嗅覚がにぶい = 好酸球性副鼻腔炎?
YouTuberのHIKAKINさんが、好酸球性副鼻腔炎の手術を受けるそうです(2025/1/19のニュースより)。今回は、この「好酸球性副鼻腔炎」についてです。
好酸球 = 白血球の一種でアレルギーを担当
副鼻腔炎 = いわゆる蓄膿症
なので、ざっくりアレルギー性の蓄膿症という感じです。
ぜんそく + 嗅覚がにぶい = 好酸球性副鼻腔炎?
鼻水の成分が固まってポリープ(鼻茸)となり、嗅細胞が多い嗅裂というところを塞ぎやすいため、嗅覚障害が出やすくなります。好酸球性副鼻腔炎は長い持病のような場合が多いため、ご本人は慣れてしまって「嗅覚がにぶい」と感じていないこともあります。
副鼻腔炎の原因になる好酸球は、同じく喘息(ぜんそく)の成り立ちに関わっていることが多く、この好酸球性副鼻腔炎は喘息に合併※していることが多いです。特に重症な喘息患者さんでは、2人に1人は合併しているという研究結果もあります。好酸球性副鼻腔炎のある喘息患者さんは比較的重い喘息である可能性が高い、とも言えるでしょう。また好酸球性副鼻腔炎があると、アスピリン不耐症(あるいはアスピリン喘息やNSAID過敏喘息とも)の体質も持ち合わせている可能性があり、その場合は痛み止めの服用でひどい喘息発作が起こることがあるため要注意です。そのような経験がある場合は、ぜひ担当医に伝えましょう。
※ 同じ空気の通り道(airway)に同一の原因で起こる病気(disease)ということで、鼻と肺の病気が合併しうることを標語的に”one airway, one disease”と言うことがあります。
診断には採血とCTが必要、手術すれば喘息までも改善しうる
好酸球性副鼻腔炎と判断(診断)するためには、①採血で好酸球が血液中に多くないかを確認、②副鼻腔のCTを撮って特徴的な鼻茸があるかどうかを確認、の2点が有効です。
上記のようになかなか厄介な好酸球性副鼻腔炎ですが、治療は上記HIKAKINさんのように手術するのが1つかと思います。ステロイドの飲み薬も効きますが、副作用が多いため、あくまで短期的にとどめた方が良いです。いずれにせよ、耳鼻科を受診して治療方針を相談するのが大切です。当院でも必ず耳鼻科へご紹介としています。手術を受けられた方からは、「こんなに鼻の奥に空気が通るとは思わなかった」「今まで匂いがよく分かっていなかった、ということがよく分かった」等々の感想を頂いています。そして重要なことに、多くのケースで手術により喘息も改善します。これまで必要だった喘息治療薬が減らせることが多いです。
一方、残念ながら手術で切除した鼻茸が再発し、副鼻腔炎も喘息も再燃してしまうことが多いです。完治しづらいというのが国から難病指定されている所以、という訳です。術後再発してしまった場合の選択肢として、手術で採取した鼻茸の分析結果を添えて難病申請し、医療費助成制度を受けられるようにした上で、高価な注射剤(デュピクセントなど)による治療※を受ける、という方法があります。これにより再度、喘息を含めた症状の改善が得られます。
※ デュピクセント治療の継続は当院でも可能です。できれば治療を開始し安定していることが望ましいです。
まずはその可能性を一度は考えるところから
ということで、まずは喘息患者さんにおいては、まず自身が好酸球性副鼻腔炎があるかも?といった可能性を一度は考えることが、よりよい治療の一歩になるかもしれません。周囲の人と比べて嗅覚が鈍いかも?と思ったら、喘息治療医にぜひお伝えください。
まとめ
- 好酸球性副鼻腔炎は喘息に合併することが多い。
- 嗅覚低下が疑うきかっけとなり、採血と副鼻腔CTの検査を行ってほぼ確定する(医療費助成制度を受けるためには、手術などで病変採取し、より正確な病名確定が必要)
- 手術で鼻茸を切除すれば、嗅覚も喘息も改善しうる
- 残念ながら手術後の再発も多いが、その場合は定期的な注射治療が選択肢(ただ高価なため、上記医療費助成制度を受けられるようにしてからが良い)