マイコプラズマ肺炎について

マイコプラズマ肺炎が引き続き猛威を振るっています。神奈川県衛生研究所 感染症情報センターのHPによれば、10月に入ってもなお、例年平均の約10倍近い件数が出ています。少なくとも直近10年間では最多のレベルです。

確かにここ1-2か月間、咳や発熱で当クリニックを受診される方に肺炎が多いです。マイコプラズマ肺炎の「確定診断」(疑いではなく、病気であると確定すること)はなかなか難しいため断言はできないですが、やはり上記流行と無関係ではないと思います。

小さなお子さんのいるご家庭で、まずお子さんの咳と熱が続いて小児科で肺炎と診断、引き続いてお母さんやお父さんにも同じような症状が出て当クリニックを受診され、レントゲンを撮ると肺炎の影が写っている、というパターンが目立ちます。

マイコプラズマ肺炎の検査は、

  1. イムノクロマト法:ノドをぬぐってすぐ結果が出るが、信頼性がやや低め
  2. LAMP(ランプ)法:鼻の奥をぬぐって結果は後日だが、信頼性は高い
  3. 血清診断:採血で結果は後日、よほど数値が高ければ確定(そうでない場合は2週間後に2度目の採血が必要ですが、その頃にはだいたい治っていることがほとんど)

などがあり、当方では2,3を行っています。ただマイコプラズマにそれ以外の細菌感染が合併していることもあり、治療法を選択するにあたって「マイコプラズマか否か」のみにこだわるようなことはありません。

マイコプラズマ肺炎の特徴には、

  • それ以外の肺炎(例えば肺炎球菌による肺炎や誤嚥性肺炎など)と比べ、若い人に多い
  • 飛沫感染する ➡ マスクをすれば相手への感染を防げるかも!
  • 潜伏期間は2-3週間と長め ➡ お子さんの咳や熱が治まったころにご両親が発症…の上記パターン。
  • 普通の肺炎と比べて風邪症状(鼻水やノドの痛みなど)が起こりうる。(なので「非定型肺炎」といった言い方もされます)
  • 実は感染しても肺炎までに至るのは3-13%というデータ。レントゲンを撮っても異常が写らない、気管支炎レベルで済むことも多い。また自然治癒も多い
  • とにかく咳が長引く。治った後も「感染後咳嗽(がいそう)」として週の単位咳が続きやすい。

などがあります。

実は私も幼少期にマイコプラズマ肺炎にかかり、入院しました。当時のマイコプラズマ肺炎はどいういう訳か夏季五輪の年に流行し、「オリンピック肺炎」などと呼ばれていました。私の時はロサンゼルス五輪でした。1990年代以後は流行のパターンが変化し、これはマイコプラズマに効果のある抗生剤「クラリスロマイシン」が発売された影響があると言われています。

これからの時期は新型コロナやインフルエンザも増えてくる可能性があり、マイコプラズマも含めて、「熱とセキがあるなら、周りにうつさないためにマスクをしましょう」(明らかに喘息の方は判断が難しいですが…)ということでしょうか。

まとめ

  • マイコプラズマ肺炎が過去10年で最大の流行中
  • 普段健康な若い方で熱+セキで肺炎の影があれば、現状疑わしい ➡ 適宜検査 + 抗生剤の治療
  • 治った後も咳だけが残りやすい(感染後咳嗽)
  • 簡便な診断法はなく、コロナやインフルエンザともすぐに区別がつかないので、熱+セキがあるならマスク着用を!

2024/10/31追記:

マイコプラズマ感染症の大流行に伴い、6学会合同で「マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について」が発行されました。以下は日本感染症学会のホームページです。(期間が過ぎるとリンク切れする可能性があります。)

マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について |お知らせ|日本感染症学会マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について |お知らせ|日本感染症学会