新しい肺炎球菌ワクチンのキャップバックス®とプレベナー20®を比較!

肺炎球菌は、高齢者の肺炎・敗血症・髄膜炎など、重い感染症を引き起こす細菌です。
現在、おとな向け肺炎球菌ワクチンには、
- 65歳になったら推奨のニューモバックス®
- 66歳以降に推奨のプレベナー20®
がありますが、先日10/29に新しいワクチン「キャップバックス®」が登場しました。
今回は66歳以上でおすすめのプレベナー20とキャップバックスについて、
どちらが良いのか?を含めて、まとめてみました。
✅ 1. どちらも予防効果が一生持続
プレベナー20とキャップバックスは、同じくPCVと呼ばれるタイプの肺炎球菌ワクチンです。
PCVの特徴は、1回の接種でほぼ生涯免疫が持続することです。
肺炎球菌には90種類以上の血清型があり、プレベナー20は20種類、キャップバックスは21種類の型をカバーします。
なので、プレベナー20をPCV20、キャップバックスをPCV21と呼ぶことがあります。
✅ 2. プレベナー20とキャップバックスの基本的な違い
● プレベナー20(PCV20)
- 国内データで、肺炎を起こす血清型の56% 1)をカバー
- 2024年8月から日本でも使用開始
- 海外のデータが豊富で、実績が多い
- キャップバックスより、やや価格が低い
● キャップバックス (PCV21)
- 国内データで、肺炎を起こす血清型の75% 1)をカバー
- 2025年10月から日本で使用可能に
- プレベナー20ではカバーできない血清型を追加
- 最新でカバー範囲が最も広いが、価格はやや高め
✅ 3. 日本で「キャップバックスが有利」とも言われる理由
日本で流行している肺炎球菌の血清型は年によって変わりますが、
近年は プレベナー20 ではカバーしきれない血清型35Bや15Aの報告が増えてきています 2-4)。
これらに対して キャップバックス は上記血清型をカバーできるため、
「日本の流行状況を考えると、キャップバックス の方が“やや守備範囲が広い”」という評価もあります。
✅ 4. 価格の違い
現時点ではまだ自治体の補助は出ず、接種は自費となります。
多くの医療機関で、
- プレベナー20:比較的安い
- キャップバックス:プレベナー20より高め
という傾向があります。
※具体的な金額は医療機関によって異なります。
患者さんからすると
「せっかくなら最新のキャップバックスを…」
と思いつつも、
「値段を考えるとプレベナー20でも良いのでは?」
という迷いが出るかと思います。
✅ 5. 効果の違いは?
いずれも 結合型ワクチンで、免疫がつきやすく、長期の予防効果が期待できます。
有効性の比較データは今まさに蓄積されている段階ですが、現時点の理解としては:
- プレベナー20:実績が多く、安心して使える
- キャップバックス:カバー範囲が最も広い“最新型”
どちらも「重症化予防」が目的であり、大きな優劣が決定的に示されているわけではありません。
✅ 6. どちらを選べばいい? 当院の考え
当院では、患者さんの状況に以下の様にご案内しています。
● キャップバックス をおすすめする方
- より広い血清型カバーを希望する
- 慢性呼吸器疾患(喘息・COPD など)があり、肺炎リスクを可能な限り減らしたい
- 新しいワクチンを選びたい
● プレベナー20 でも十分と考えられる方
- コストを抑えたい
- ワクチン歴がなく、まずは広く標準的な保護を得たい
- 海外データが豊富なワクチンを希望する
どちらも「間違い」ではなく、適切な選択肢です。
✅ 7. まとめ(ポイントだけ)
両者の違いを、表にまとめてみました。
| 項目 | プレベナー20® (PCV20) | キャップバックス® (PCV21) |
|---|---|---|
| 肺炎を起こす血清型のカバー率 | 56% | 75% |
| 日本の流行株への対応 | 多くをカバーするが、一部カバー外の型がある | より広範囲に対応。近年増えている型も含む |
| 効果の特徴 | 海外データが豊富、実績が多い | 最も新しく、広いカバー範囲 |
| 当院での価格 | 11,000円 | 13,500円 |
| 向いている人 | ・コストを抑えたい ・まず標準的な効果を得たい | ・より広い予防効果を希望 ・慢性呼吸器疾患で肺炎リスクをできるだけ減らしたい |
66歳以上、特に喘息やCOPDなどがある方は、ぜひ接種をお勧めします。
ご希望の方は、受診時あるいはお電話でご予約下さい。
📖 参考文献
- Miyazaki T, et al. Community acquired pneumonia incidence in adults aged 18 years and older in Goto City, Japan : a prospective population-based study. CHEST Pulmonary 2023 ; 1 : 100007.
- Ono T, et al. Serotypes of Streptococcus pneumoniae before and after the introduction of the 13-valent pneumococcal conjugate vaccine for adults and children in a rural area in Japan. Pathogens 2023 ; 12 : 493.
- Nakano S, et al. Nationwide surveillance of paediatric invasive and non-invasive pneumococcal disease in Japan after the introduction of the 13-valent conjugated vaccine, 2015-2017. Vaccine 2020 ; 38 : 1818.
- Kawaguchiya M, et al. High prevalence of antimicrobial resistance in non-vaccine serotypes of non-invasive/colonization isolates of Streptococcus pneumoniae : A crosssectional study eight years after the licensure of conjugate vaccine in Japan. J Infect Public Health 2020 ; 13 : 1094.
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