肺が破ける病気「気胸」
有名な歌手が気胸になり、無事回復したとのニュースがありました。マスコミでは「肺気胸」と言われがちですが、気胸は肺に起こる病気なので、「頭痛が痛い」「初デビュー」「馬から落馬」のような感じでしょうか。とにかく気胸は肺に起こる病気です。もっと正確に言うと、肺表面を覆っている胸膜(きょうまく)の疾患です。
図のように、肺は胸腔というケースの中にぴったり収まっている空気袋のような物で、何らかの原因で袋に穴が空くと痛みが生じ、さらにそこから空気漏れが起こるので肺つぶれて息苦しくなります。穴が空く原因としては、生まれつき弱いところが破ける場合(=「自然気胸」)、タバコの吸いすぎ等々、肺の病気が原因で破けるが弱くなって破ける場合(=「続発性気胸」)の2パターンがあります。
前者は若いやせ型の男性(通称「イケメン病」と呼んでいる方がいましたが、言いたいことは分かる気がします)、後者は書いた通り高齢の喫煙者が多いです。
ちなみに「〇胸(〇きょう)」という病名は、〇が胸腔に溜まっている状態を指します。たとえば肺炎がこじれて胸腔に膿が溜まれば「膿胸(のうきょう)」、外傷やその他何らかの理由で出血が起こり胸腔に血液が溜まれば「血胸(けっきょう)」などです。
ということで、いきなり片方の胸が痛くなり、深く息を吸うと(傷が引き伸ばされるため)痛みが増し、特に熱はないし胸を叩いても痛くはないが、何となく息苦しい感じ…というのが典型的な気胸の症状です。明確なきっかけがないことも多いです。
何にしても、胸が痛い場合は病院でレントゲン検査が望ましいです。あるいは上記とちょっと違って、胸の痛みが「像や戦車に踏まれたような」であるとか、深く息を吸っても痛みが変わらないであるとか、高い熱がある等の場合も、気胸以外の原因を調べるために早めの受診をすべきです。
気胸であった場合、軽ければ通院で経過観察、しぼんだ程度が強ければ入院して胸腔にチューブを縫い付ける処置、特にその方が再発であれば手術…といったように対応します。
胸にチューブを入れる処置の場合はほぼ局所麻酔で行いますが、手術扱いにはなりません。胸腔ドレーン挿入術という「処置」です。一方で、再発の方に対しては全身麻酔で「手術」を行うことが多いです。1度自然気胸を起こすと、2回目を起こす可能性は3-5割、3回目はもっと高い確率となりますが、手術をすれば再発率は数%まで低下します。
初回の気胸でも、例えば受験や大事な仕事を控えているなどの場合、再発予防で手術とする場合もあります。
気胸を予防するために確実なのは、禁煙です。「タバコの吸いすぎ→肺気腫→大変治りづらい続発性気胸」となってしまう方がおられます。言うまでもなく喫煙は、肺癌や動脈硬化・心臓病などたくさんの病気でリスクファクターとなります。
当院では禁煙外来を開設予定です。禁煙の希望がある方は、どうぞご相談下さい。